社会意識研究グループ
東京電力福島第一原子力発電所での事故により、原子力発電に対する人々の受け止め方はどう変わったのでしょうか。また、エネルギー問題全体の中で、原子力発電はどのような役割を求められているのでしょうか。
社会意識研究グループでは、これらの問題の解明をめざして、いろいろな角度から原子力発電に対する社会意識動向の調査を行うとともに、適切な情報発信のあり方の研究に取り組んでいます。
原子力発電に対する世論の継続調査
原子力発電の利用について、1993年の調査開始以降、緩やかに増加していた「やむを得ない」を中心とする肯定的意見が、2011年に発生した福島第一原子力発電所での事故を転機として大きく減少しました。人々の電源選択基準が「大事故のリスク」を重視するものへと変化し、不安も高まりましたが、事故から10年以上が経過し、事故直後の強い否定的意見や不安は少しやわらいでいることが調査結果から明らかになっています。継続調査では賛否にとどまらず、賛否の背後にある認識の変化もとらえています。
原子力発電の利用に対する意見
エネルギー問題におけるリスク・コミュニケーションに関する調査
エネルギー問題に関するコミュニケーションでは、情報の受け手の考え方を理解し、関心や意見に耳を傾ける努力が求められます。本調査では、態度があいまいで、多様な異なりのある層を対象に、その特徴を把握するための調査や、組織がコミュニケーション活動の方針を考える際に使用するツールの検討などを行っています。
エネルギー資源に乏しい日本では、そのほとんどを海外からの輸入に頼っています。近年、新興国等の急速な経済成長によるエネルギー需要の急増、化石燃料の大量消費が招く地球温暖化に加え、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする国際紛争が及ぼすエネルギー需給ひっ迫や価格高騰など、世界のエネルギー情勢は極めて深刻になっています。
当グループでは、エネルギー問題を国民の一人ひとりが我が事として捉えるには、次世代を担う子どもたちに対する教育が特に重要との考えから、教育現場(学校)でのエネルギー環境教育を推進しています。この取組みは、関西地域および福井県の教育関係者などが、エネルギー環境教育に関する実践研究の推進および普及促進を目的に活動する「エネルギー環境教育関西ワークショップ研究会」と連携し、授業実践事例等の積み上げやデジタル教材等の制作を進めるほか、成果は関連学会での発表や出版物などで広く還元しています。
「地球温暖化問題」がテーマ
日本の「エネルギー自給率」がテーマ
主な成果 – 書籍・冊子
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『安心の探究 安全の人間科学−21世紀の課題』
(プレジデント社/2001年) -
『データが語る原子力の世論10年にわたる継続調査』
(プレジデント社/2004年) -
『原子力発電世論の力学 -リスク・価値観・効率性のせめぎ合い』
(大阪大学出版会/2019年) -
『実践 リスク・コミュニケーション』
(原子力安全システム研究所/2024年)